日本橋 喫茶 ウィンザー

雨のウィンザー

数年前に、日本橋に勤めていました。まだコレド日本橋ができる前で、東急デパートの跡地では、地盤の工事などをやっていたためビルが揺れ、911の頃でもあったので、
「ついにこのビルが標的になったかと思ったよ〜」
というおじさんジョークが一日一回は聞かれました。旅行会社がテロの標的になることは、まずないと思います。


最近ふと思うのですが、長くいられる会社というのは、人間関係がいいからとか、仕事内容が良いからとかいうもっともな理由よりも、
「近くに安くておいしい食事場所がたくさんあるから」
という理由が、私の中では一番大きいような気が。カッコわるぅ〜。


日本橋もそんな場所のひとつで、ランチはもちろん、仕事帰りにもよく食事をしました。飲み会の集合時間まで間があるような時、女子はお茶をしたりします。また、予想外に早く店を出されたあとなども、お茶をして帰ったりします。なので、日本橋近辺の、ちょっとしたコーヒーショップは全部知っていると思っていたのですが、この間、全然違う場所で働く人から、この喫茶店の存在を教えてもらいました。


確かに前は何度も通ったことがあったんだけど、椅子が赤いビニール張りで、レジ横に年中クリスマスツリーが飾ってあり、ガラスはすりガラスというレトロな雰囲気のため、無意識のうちに心から締め出していたようなのです。


その喫茶店の名は「ウィンザー」。ケーキセットが750円という安さも驚きなのですが、コーヒーは注文後にサイフォンで入れてくれるし、紅茶はポットサービスと、予想外に本格的。ケーキはオーストリアのカフェのように、お盆に載せて持ってきてくれて、そこから選ぶ方式。10種類くらいありますが、どれも例外なくおいしそうで、絶対に悩みます。


私が今まで食べたのは、シュークリームといちごのショートと、ココナツチーズケーキとサバランとナポレオンパイ。ひとつもハズレはありませんでした。サバランなんて、オレンジリキュールの苦味がガツンと効いていて、飲み会帰りの男性にもいいんじゃないでしょうか。

で、そこで2時間近くしゃべっていると、お店のおばちゃんが、クッキージャーに入ったチョコレートとキャンディを持ってきてくれるのです。たまに紅茶のお湯を足してくれたり、コーヒーのおかわりも注いでくれたりします。ケーキとコーヒーのおいしさも魅力的なのですが、経営者らしきおばちゃん達の感じの良い接客も、かなり魅力的。750円で2時間も粘る迷惑な客の私たちにも、イヤな顔ひとつしません。なんというか、都内の店らしくない余裕を感じます。


ちなみにそのおばちゃんは、若い頃は、上品な美女だったであろう面影が今も残っている、優しげなお方。私の経験では、こういう店のママさんは、キツい顔と性格の人が多かったので、彼女の人生などにも思いをはせてみたり。


ここから東京駅にも、日本橋駅にも行けるのですが、東京駅方面に裏路地を歩いていくと、古い昭和な民家を改装したバーやカフェもあって、そのあたりの軒先には、複数の猫が寝そべっている確率高し。働いているうちに、この店のこと知っておきたかったなー。