スチュワート・コープランドを間近で見る

ポリスが再結成して、ワールドツアーが始まるというのは以前に書きました。日本ツアーは、来年2月の初旬にほぼ決まりという記事を読みました。んなこと言っても、あんなに個性の強い3人が集まって、衝突もなく無事にツアーが進行できるかどうかまだ懐疑的なので、あまり喜び過ぎずに待ってます。


そのメンバーの一人、ドラマーのスチュワート・コープランドが、ポリス時代に撮りためたパーソナルな8ミリフィルムを、ポリスが無名時代からワールドワイドな人気を博するまでのドキュメンタリー映画にして発表しました。その「ポリス・インサイド・アウト」と名づけられたフィルムの、日本での公開が、今週と来週2週間だけなのです。それも東宝シネマズの限られた劇場でしか上映しないのです。一応調べてみると、地元近くにこのたび新しくできた劇場では、奇跡的に上映されるようです。その場所とは「流山おおたかの森」。首都圏では他に、六本木と横浜と川崎。なぜ、なにゆえに、大雨のたびに土砂崩れが起きそうな地名の流山に。


さっそく予約したところ、ちょうど初日が4月1日だったので、映画の日で1000円。なんてラッキーなんだ。しばらく経って、ポリスのニュースを読んでいると、その監督であるスチュワート・コープランドが映画の公開に合わせて来日し、しかも舞台挨拶をしてくれるというのです。舞台挨拶があるのは、六本木のレイトショーと横浜と、そしてなななんと流山。なぜ、なにゆえに流山なのか。流山といえば、昔Sさんとドライブ中に入った、「流れ寿司」が印象的。回転寿司じゃないよ、流れちゃうんだよ。カウンターに座ると、寿司桶の中に入ったネタが、流水プールのように、水の上をプ〜カプカ連なってドンブラコと流れていました。これが流山名物かどうかは知りませんが、この思い出が強烈すぎて、今でも流山といえば「流れ寿司」しか思い出せない。


偶然とはいえ、そのチケットを買えた私はなんてラッキーなんだろう。っていうか、スチュワート・コープランドは、流山がどんなところか知っているのかい? できれば誰も教えないで欲しいなあ。「東の六本木と呼ばれている」くらいのニセ知識を与えておいてほしい。モチベーションが下がったら困るもん。


当日チェックしてみると、なんとか席は売り切れに近い状態のようです。あーよかった。周りを見回してみると、私と同世代か、ちょっと上あたりの人が多い気がする。本当に本人が出てくるまでは、半信半疑でいたのですが、いざ間近で見ると、感動で胸がいっぱいになってきました。気さくなおじさんといった感じで、いまひとつすべりの悪いジョークを連発したりして、とても楽しかったです。



肝心のフィルムの方は、上映時間の1時間半近くという時間を忘れさせてくれるくらい面白かった。あの場にいたのは、おそらく95%はポリスのファンだと思うから、全員楽しんだだろうけど、ファンでなくても、ある青年たちが、思春期的な結合でバンドを作り、勢いだけでちっちゃなワゴンに乗ってアメリカでライブをやり、曲を書き、そして成功してからは、自家用ジェットに高級ホテル、最高の録音スタジオをあてがわれていくうちに、成功に虚しさと物悲しさを覚えて、自分の道を模索するために別れてゆくという物語としても、考えさせられるものがあると思う。上映が終わって、スタッフロールが流れた後に、思わず拍手が沸きあがっていたし。


若かったころ、シャウトして、疾走感だけの曲を狂ったように演奏していたスティングるが、今はトスカーナで静かに暮らし、内省的な曲ばかり書いているのが、なんだか自分に重ね合わせて、悲しいようにも感じました。若い時の力と、焦燥感はどこに行ってしまうんだろう。