ほんとにその名でいいのかい?

去年のこと、駅で電車を待っていたら、前に立っているイケイケなギャルが、ビニールコーティングされたポップなバッグを持っているのを見ました。
ロゴが書いてあるので読んでみると、
マルケス・・・ガルシア・マルケス・・・」
心底びっくり。ノーベル賞作家の名前です。

しかしもちろん、これはただのブランドショップの名前でした。結構人気があるんですね。何を思って、その名前にしたかは全くのナゾだなー。ファッション誌には、「ジェーン・バーキンのクローゼットをイメージしたセレクトショップ」と、書かれていました。

ジェーン・バーキンといえば、確か整理整頓が苦手な人。彼女のクローゼットを開けたら、中のものがどさーっと雪崩れてきそうなイメージなんですが。そのクローゼットの中に、セルジュ・ゲーンズブールが読みかけのガルシア・マルケスの本が、一冊くらいまぎれている可能性も、なきにしもあらず。

そういえば、「百年の孤独」って焼酎のブランドもあるし、意外にガルシア・マルケスって日本の生活に浸透しているのか。

また、先月町を歩いていると、
「新年会にどうぞ!」
と言って、ハッピを着たバイト君からチラシを渡されました。その店の名は
蟹工船
ですよ。ひえ〜。

私が学生時代に読んだ、小林多喜二の「蟹工船」は、資本家が労働者を搾取する、劣悪な環境の船の上での、とっても不条理なお話だったと思うのです。
セメント工場で働いていた恋人が、セメントの材料の石と一緒に砕かれてしまうという、とても悲惨な労働者のお話と同じく、プロレタリア文学として習ったもの。

しかも、この小林多喜二、築地の警察署で、特高に拷問されて殺されてしまうのです。築地・・・蟹・・・蟹工船・・・資本主義世界の蟹料理店の名としては、サイコーにふさわしくないと思うのですが。
「新年会で、蟹工船で、蟹たべて、満腹!」
って無邪気に喜べないわ。
「ああ今日も、安い賃金で朝から晩まで働かされた」
としみじみ思ってしまいそう。今の日本で、重労働で低賃金ってことは、そんなにないでしょうけど。