一年待ってみましたが・・・

一年ほど前のこと、朝の通勤時に、東京駅止まりの電車に乗っていました。あと2駅のところで席が一つ空いたので、座って本を読んでいると、終点に着いたとき、電車を降りるのが最後になってしまいました。このまま気付かず乗り続けてしまうと、折り返して磯の香りのする方面に戻ってしまうか、または始発になって、別な磯の香りのする方面に行ってしまうので、油断はできません。

動き出す前に電車を出ようとしたときに、電車の床の上に名刺大のものが落ちていました。ついうっかり拾ってしまうと、それはある省庁の身分証明書。な、なんて面倒なものを拾ってしまったんでしょう。名刺ならそのあたりに放置しても、まあ、それほど誰にも迷惑がかからないと思うのですが。

たまに駅の構内などで、名刺が落ちていることがあります。あれは切ない。人の靴跡がクッキリ残ってしまったアレを見ると、
「私の名刺もどこかで誰かに踏まれているんじゃ・・・」
と思います。そんで、
「あーあ、大切な取引先じゃないね、この人」
なんて思われているんじゃないかしら。

この場合、私が拾ったのは、パウチされた写真付きの身分証明書。生年月日まで書いてあり、興味深く見てみると1981年生まれの角刈りの男子でした。せ、1980年代生まれが、社会人になる時代が来てたのね、ショック。駅の事務室に届けようと思ったのですが、ホームのはるか彼方にあり、届けていると確実に遅刻するため、とりあえず会社に行くことにしました。ただでさえ車内でタラタラしていたので、届けなくとも遅刻しそうなんですけど。

会社に着いて、ホームページでその省庁の連絡先を調べて、郵送で戻すことができました。これがもし、グリコやロッテなら、感激した社員がお菓子の詰め合わせを送ってくれるかもしれないし、高野や千疋屋なら、フルーツの詰め合わせを贈ってくれるかもしれないし、PAULやポール・ボキューズならパンの詰め合わせを贈ってくれるかもしれないでしょうが、省庁じゃねえ・・・。
しかしこの省庁、市民の安全を守るのが仕事なので、
「非常時には真っ先に駆けつけます」
と言ってくれるかもしれません。でも、海の安全を守ってくれるような省庁だったので、
「海の上でなら」
という非常にレアなケースで、優先的に助けてくれる可能性があります。

しかしそれから一年、総務からお礼の電話があったきり、何の感激のご褒美もありません。