さる筋の方の読書

この間、東武野田線柏−船橋間というマイナーな電車に乗っていると、前にいかにもヤンキーが座っていました。その時は姉と一緒だったので、話に夢中になりながらも、白いジャージに黒のタートル、首から下げたゴールドの十字架、ありえない角度の眉などに、時々目が釘付けに。

その時、二人で話していたのは、「孤虫症」とかいう変な本の話。私はまだ読んだことないのですが、相当変な本らしく、
「言葉では言えないから、今度貸してあげる!」
という言葉に、
「ちょっと借りたくないな」
と思っていたところ。

去年の今頃も、「アンナ・カレーニナ 上・中・下」プラス、「復活」を貸してもらって、とってもロシア気分な冬を過ごしたもんなー。ロシアの小説には、紅茶やサモワールウォッカがひんぱんに出てくるので、読み終わると喉が渇きます。

変な本と言えば、夢野久作の「ドグラマグラ」という小説も、相当奇妙でした。読んだあとすぐに映画化されたのですが、枝雀師匠が主演という強烈な配役に、見たいような見たくないような。見ませんでしたわ。今もあんまり見たくありません。

先に姉の降りる駅に着いたのですが、姉を見送る時に、ついうっかりまたヤンキーな彼の方を向いてしまいました。すると、ヤンキー読書中。しかも、レイアウトからすると絶対に岩波文庫岩波文庫といえば、学術書や名作文学を集めた、歴史のある格調高いシリーズ。で、表紙の見だしが青なので、これは「思想書・哲学」の印のはず。がびーん。

勇気を出して、外の景色を眺めるフリをしてヤンキーの本の題名を凝視してみました。漢字三文字です。
それは、
「武士道」。
武士道といえば、新渡戸稲造の名著です。
私も読んだことはないのですが、
「町人の切り方」

「商人のカツアゲの仕方」
などが書かれているわけではなかったと思います。むしろ、義勇仁礼などの、謙虚なこころが説かれていたような。

このヤンキーがどこまで真剣にこの本を読み込んでいるのか不明なのですが、もしその本を愛読しているのなら、
「せめてそのゴールドの十字架は外しなさい」
と思いました。