冷房をめぐる攻防

会社の空調はおかしい。というか、昭和的。夏は寒く、冬暑い。夏なんて、ここでペンギンを飼ってもいいくらいに冷えるのですが、社内でも暑い方の窓側に合わせて、空調全体の温度も下げているわけ。

よく真夏のニュースで、
上野動物園のペンギンに、氷の柱が差し入れられました」
という季節のネタがありますが、あれを見るたびに、
「ペンギンさん、今度はこの会社にいらっしゃい」
と思わずにいられません。

まだ夏や冬の真っ盛りならば、自分の方の服装で調節できるのですが、季節の変わり目など、外はアラスカなのに会社はボルネオ島なので、何を着てゆくか本当に悩みます。

社内では、やせたおばさまの「寒い派」と、太ったおばさまの「暑い派」があり、寒い派のおばさまは良く、
「アンタが太ってるから暑いのよ」
なんて暑い派のおばさまに、直球のセリフを投げつけたりしています。そんな時、周りのみんなは、ひたすら聞こえないフリをして、ポーカーフェイスで仕事を続けています。巻き込まれたらかなわん。

一度そんなイザコザの最中に、偉い人が通りかかってなだめようとした事があるのですが、その偉い人は、体はスリムなのに丸顔だったので、両派とも味方につけるかどうか、迷っておりました。

先週、外はさわやかで涼しいのに、社内に熱気と湿気がこもって、気持ち悪い日がありました。でも派閥争いに発展しそうなので、誰も
「冷房つけようか」
と言い出しません。空調の装置は、社内の隅っこにある扉の中。もう、仕方ないのでこっそりその中に行って、勝手につけてしまおうと思いました。

その扉の中には初めて入ったのですが、空調の装置って、やけに大きくて、縦2m、横1m位。スーパーコンピューターか。しかし、スイッチはボタン式ではなく、チャンネル方式。私が小さい頃、初めて家にクーラーが入ったときはこんなスイッチだったなー。

スイッチを「冷房」の方にひねると、
「キーグゴゴゴゴ」
というスゴイ音。思わずスイッチを「切」に戻して、その場で気持ちを落ち着かせてみました。会社中に響き渡った轟音。すかさず「寒い派」と「暑い派」のおばさまがここへやってきて、
「アナタ、どっちの派閥に入るつもりなの!?」
なんて、吊るし上げられる事を想像してドキドキ。

結局身を低くして、その場を逃走。しかし暑い。どうせなら、冷房のままにして逃走するんだった。