猫毛は世界へ

最近、猫に飽きられたと思う。近づいていくと逃げるし、目が合うと逃げるし、まるで心が離れた恋人のよう。今まで心が通っていたと思うだけに、心変わりが悲しい。

朝も、起きたての時は、
「ミャーン!」
といちもくさんにかけてきたのに、最近では、腕を広げて待っている私の横を通り抜けてゆく。むなしい。

そんな猫が、珍しく朝から甘えに来た。足に頭をすり寄せて、ニャーニャー言っている、わーかわいい。と、思ったら、今日の私の服はパンツ。それも黒。嫌がらせなの!?

出かける直前には、パンツのすそは猫毛だらけ。粘着テープを使ってキレイにしなきゃ、と思っていたのに、すっかり忘れて出かけてしまった。駅に行く途中に裾をも見てみたら、ギャー!すごい毛。猫はまっ茶色に見えるのに、一本一本の毛を見ると、根元から毛先まで無駄に微妙なグラデーションになっている。根元はクリーム色に近いため、黒い服では目立つ。まるでそういうガラのパンツみたい。

かと言って手で払っても、またこれが無駄に吸着力が強くて、全然落ちやしない。結局そのまま駅まで行った。自分が見えていないものって、人も見えていないような気になるものですね。パンツの裾なんてほとんど目に入らないし、もしこれが袖だったら、ものすっごく気になったところだけど。

それから25分間、電車に乗りっぱなし。そして東京駅に着いてパンツの裾をチェックすると、あーら、一本もついていません。

粘着テープより強いなあ、おじさんたちのスーツのパンツの吸着力は。