土曜日に別世界に

ここのところ、関東地方はとても夏らしい天気。湿度が低くて風が気持ちよく、空は水色で積乱雲が出ている、典型的な日本の夏。夏休みを思い出すなあ。毎日、こうだといいんだけど。

土曜日は消防設備点検の日だった。天井にあるセンサーに、お兄さんが長い棒状の機械を押し付けると、「フワーンフワーン」という警報が鳴り始めるというヤツ。それを見た猫ったら、何を思ったか、お兄さんから隠れながら、「にゃうーんにゃうーん」と鳴き始めた。な、なによ!?対抗意識?

夕方、実家に出かけるために家を出た。家から駅までは、不動産広告によれば5分。しかし、エレベーターが来るのを待ったり、道草を食うのを勘定に入れると、8分はみておきたい。そこで、いつものように、4時25分の電車に乗るのに、10分前の4時15分に家を出た。

普通にエレベーターが来て、普通の速度で歩いていたはずなのに、駅に着いたら、よ、4時30分・・・。家から駅の間に、何らかの形で私が知らない別の世界を通ったに違いない。

昔読んだ少女漫画で、自分が住んでいるのとは別な世界に行ってしまう、というSFがあった。その別な世界は、今自分が住んでいるのとは、似ているけれど、微妙に違う。主人公は、自分の家に帰ったら、母親に、「うちには、あなたみたいな子供はいません」と言われ、家の外の物陰から見守っていると、その家には別な子が帰ってきた・・・というようなお話。

主人公が、自動車事故が起きたすぐ横の電信柱の隙間を通り抜けた、それが別空間への入り口だったのでは、という結論。この話を読んだ小学2年の頃から、電信柱と塀との狭い空間をすり抜けるたびに、毎回ドキドキ。月曜の朝などは、あえてこの中を通ってみようかと思ったりして。

土曜日に、そのようなところを通ってしまったにしては、今までと、全然世界に変わりがないな。電車の中でいつも見るマンガ男もいたし。正直いなくてもいいんだけど。試しに会社に行ってみたが、席は変わりなくあり、後から「ヒー!私の席に、誰か知らない人が座ってるわ!」という人も来なかったし。