免税品でも洋酒は買わない

お中元には梅が欲しいなあ。それか海苔。もらえるあてはひとつもないけど。

以前、頂き物で名前もハッキリ覚えていないが、「あとひきあられ」、だかせんべい、というものはおいしかった。直径20センチくらいの丸い缶に、縦4センチ、横2センチくらいの長方形のせんべいがつまっている。せんべいの表面には砂糖と醤油をまぜたような甘辛い粉がついている。確か世田谷だか、目黒だかにお店があった。一枚たべるつもりが止まらなくなり、一度に30枚近く食べて気分が悪くなったこともある。

お中元にお酒って、もらっても困る。父親が飲んでもあまり酔わない体質のせいか、お酒が強いと見込まれて送ってくるらしいが、実は彼が好きなのはビールだけ。しかし、送られてくるのはブランデーやウィスキーや日本酒の一升瓶。

日本酒は、お歳暮にタイミングよく来れば御屠蘇として活躍もできるが、そうでない場合、たいてい賞味期限をとっくに過ぎてからその存在に気づき、あわてて私のところに横流しされてくる。もちろん飲むと、新鮮さがなく、あまりおいしくない。そこで料理酒に回されるのだが、「越の寒梅」なんて、私が作るような、ロクでもない料理の隠し味になるために作られたお酒ではないはず。

洋酒は、新鮮さが命というわけではないので、うちに横流しされた後、そのままサイドボードに飾られたりしている。カミュだのヘネシーだの、大げさなボトルに入ったブランデーが、まっ、まぶしい・・・。家の中で一番ブルジョア的な一角。風呂上りにはシルクのバスローブをはおり、膝の上にペルシャ猫をのせ、ロッキングチェアに揺られながらブランデーグラスを傾けて、松方弘樹になってみる。

そういえば、20年以上前、実家には木製の巨大なオーディオセットがあり、その上には、母お手製のレース編みのコースター。電話機には、もちろんカバーがかかってました。昭和のリビングだわ〜。そして、さらにそのレース網みの上には、馬車に見立てたカミュのナポレオンが誇らしげに飾られていた。最近実家に帰って何気なくサイドボードを見ると、キャッ、まだ手付かずじゃん・・・。もうすっかり熟成していると思うが、よほど大切なものと見えて、いまだに家には横流しされてこない。