いったいどこの諜報部なのよ

週末も、先週から忽然と消えた赤い煮込み鍋(500円)の捜索に追われた。同居人をあまり疑うと逆ギレするので、こっそり物置や資源ごみ置場を探ってみたり。間違えて洗面器にしてないか、電灯のカサにしていないかも一応チェック。しかし、見つからん。気持ちわるーい。そういえば、こんな神隠しのような紛失事件に何度かあっている。

ハッキリ覚えているのは、京都で一人暮らししていた頃。一度目は時計。高校入学時に買ってもらった、エメラルドグリーンの文字盤のセイコーの時計、とっても気に入っていたのに、帰宅して時計置場に置き、そして翌朝出かけるときにはもうすでに無かった。その時はあまり深く考えずに、「タンスの後ろにでも落ちたかな」と思っていたが、時計なしの生活の不便さに、ある日部屋中ひっくり返してみたがどこにもなし。それどころか、引っ越す時にも見つからなかった。

二度目は食べ物。風邪を引いてフラフラになりながら、「これで倒れたら、餓死するな」という危機感に襲われ、とりあえず深夜買い物に出た。買ったのはおかゆとバナナとフランスパン。しかし、翌朝目が覚めてみると、フランスパンだけがない。念のためレシートも確かめてみたが、確かに買っているし、だいたい家まで持ち帰ったハッキリとした記憶がある。

これはフランス諜報部のピエールが、自らの存在をほのめかすために盗んで行ったか。そのフランスパンときたら、パン屋さんに売っているようなパリパリの本格的なものではなく、ヤマザキが出しているフニャフニャのもの。ピエールはきっと、「こんなのフランスパンじゃねえよっ!」と荒れたに違いない。辛い任務だねえ。

本当に不気味で友人達にも相談してみたのだが、「部屋にブラックホールがあるらしい」という、中途半端な笑い話にされた。