俺に触ると怪我するぜ、って意味か?

大学生の頃の友達には、個性的な人がたくさんいた。浪人と留年を繰り返し27歳になっていた先輩は「オッサンさん」と呼ばれていた。その先輩は、若い頃から言動がオッサンくさく、同級生から「オッサン」という仇名で呼ばれていたのだが、後輩はまさか「よお、オッサン!」というわけにもいかず、とりあえず「さん」付けでしのいでいた。本格的なオッサンになった今、何と呼ばれているのだろう。

また、知り合いには演劇青年がおり、彼は大学を卒業したあとしばらく、フリーターをしながら俳優を目指していた。バイト先は太秦の映画村。そこで町人や武士の格好をして歩き回る他、「お名前彫るよ!」のキーホルダー屋で、みやげもののキーホルダーに名前を彫り続けていた。彼の普段着はメッシュのTシャツ。たまたま彼を見た友達には、「あの人は、ニ、ニンジャのバイトをしているから」と言ってあったが、本当に普段着なんだよなあ。どこで売ってるんだか。

彼について特筆すべきことは色々あり、まず、まだ学生時代と同じ下宿に住んでいることがあげられる。家賃は2万円。昔はその下宿の一階に呼び出し用の公衆電話が置いてあったが、今はさすがに自室に電話をひいているようである。その呼び出し電話の番号は「712-8604」で、最初に教えてもらった時は、「ナイフヤロウ ヲ シレと覚えろ!」と言われたため、記憶に刷り込まれて離れず。今も彼の自室の電話番号は全く覚えていないが、何かあったときはナイフ野郎に電話するつもり。ナイフ野郎って何?

また、共通の友達の電話番号は「721-2917」だったが、それは「ナニイ?ニクイナ!と覚えろ!」と言われたため、無意味に今でも覚えている番号。私の家の番号は721-2860だったが、「ナニイ?2860!と覚えろ!」と人に紹介しているのを聞いた。よい例えが思いつかなかったと見える。

今は、ちゃんと舞台関係の定職につくかたわら、アマチュア劇団で活躍しているので、シャレたワンルームマンションにでも引っ越す余裕はあるはず。年々、下宿を好む学生も少なくなり、20室くらいあった下宿も、今は半分も埋まっていないそうだ。その下宿に住む学生からはきっと主のように扱われ、「○○さんよりは早くここを出たい」と思われているに違いない。しかし、彼の事は、テレビ朝日の貧乏人紹介番組『銭金』に推薦するつもりなので、それまでは引っ越さないでいて欲しい。