おいしいチョコが食べたい

銀座三越にSATIEというチョコレート屋さんがある。ここはいつ行っても手作りのクチュールチョコを試食させてくれる。しかも、お皿に山と盛ったチョコを店員さんの方から差し出してくれるから、「アラ、そんなにお勧めなら食べてみようかしら」という演技もできるというもの。生チョコだけあって、口の中で溶けてふんわり広がって、とてもおいしい。この試食のチョコがおいしかったので、買って職場で配ったことがあるが、「あとで食べよう」と思って机のうえに置いておくと、一時間もしないうちにムース状になってしまう。つまんで食べようとすると、指がチョコの中にぐにゃりと入っていく感触が。その後、何度か会社で配られたが、そのたび机の上でぐにゃりと触って気付く。

このサティの周りは、試食効果もあって、いつも人だかりができている。通勤途中にある東京駅の大丸も、よく色々な店が試食をやっているが、サティのように店員さん自ら持ってきてくれないので、食べたことがあるのは数えるほど。ここの地下の食料品売り場は、東京みやげを買う人や、新幹線で食べるお弁当を買う人でいつもごった返している。去年の12月、この大丸の洋菓子売り場に、いつもの倍のすごい人だかり。あまりにも黒山の人だかりなので、「これはきっとドラマの撮影をやっているに違いない」と、用もないのにホイホイ洋菓子売り場に突入。ドラマの撮影でなければ、『王様のブランチ』の取材に違いない。安藤アナはどこ?と、心躍らせて黒山の中に巻き込まれてみた。

しかし、良く見るとそれは、各洋菓子店でケーキを買おうと並ぶ人々の行列。そういえばその日はクリスマス・イブ。イブ限定のケーキなどもあるらしく、列は二重三重に続き、どこからどの店の列なのか判然としないほどの混雑ぶり。そんなところに無計画にダイブしたため、あっちの波に押されこっちの波に押しやられ、なかなかそのフロアから出ることができず、全くもって無駄な時間を食った。

その後も、たまに「東京駅大丸限定」と呼び込みをしているときがある。聞くともなしに聞いていると、ぜひ実物も見たくなり、人だかりの中に無計画に巻き込まれること数回。買ったことは一度もなし。また意味のない行動をしてしまった。もし、CIAに尾行されていたら、捜査員は私が人ごみの中で諜報員と接触したと思うに違いない。