災い転じて福となった坊主

私の姉の子供は、小学校6年生で、頭が良くてスポーツもできる素敵な男の子。髪は肩まで伸びてサラサラなので、よく女の子に間違われる。小学校の頃にこんなカッコいい子いたかなあ。

しかし、子供はサラサラヘアなのに、姉は昔から、それはそれはすごいクセ毛で、三つ編みで写っている昔の写真では、太い三つ編みからビョンビョンとチリ毛がはみ出している。高校の頃も、パーマではないという証明書みたいなのを風紀委員から授けられていた。私は全然違う髪質で、幼稚園の頃はヘアピンが髪から滑り落ちるほど素直な髪だったのに、年を重ねるにつれて髪の根性も曲がってきた。しかし、姉ほどの量もクセもなく、まあ普通。一度だけ、「長所は髪」と言われ、その後にどんな誉め言葉がくるか待ったが、それのみ。それって「この本で一番良いのは表紙」どころか「表紙の字体」と言われているようなもの。しかも一度だけだし。そういうことは決して忘れない。

姉が社会人になったある日、交通事故にあった。脳内出血を起こし、大手術をしたのだが、その時はストレートパーマでだましながらも結構キレイなロングヘア。意識が薄れる中、お医者さんに「切らないで・・・」と訴えたが、手術のために丸坊主にされてしまった。それでも一命を取り留めただけでも家族は大喜び。意識が戻ってからも、誰もあえて坊主頭のことには触れず。

その後退院し、家に帰ってからは社会復帰の足がかりとして、カツラの購入から始めた。当時流行っていたのはワンレンのロングヘアで、両サイドは段カットにして流す、というヤツ。さっそくそれを購入し、他にも色気を出してソバージュヘアも選んでいた。家族としては、女の子だし髪を失ったのは相当傷ついただろう、と思い元気にふるまう姉の姿を優しく見守っていた。しかしその後、弟の学生服を着てバットを振る「野球部員の俺」や、私の肩に手を回した「軟派な俺」などの記念写真を撮った時は、「もしかしてこの子、髪を切ったこと全然気にしてないんじゃ」と母は思ったという。たまに、「暑い」とか言って、人前でカツラ脱いだりしていたし、坊主ライフは十分満喫したはず。

その後めでたく生えてきた髪の毛は、サラサラで少しクセ毛チックながらも、以前よりずっと扱いやすくなったらしい。赤ちゃんの毛も一度剃った方が素直な毛が生えてくるらしいし、不思議なのだが、髪質は剃った後に大きく変わるらしい。