顔を見るのも腹が立つ

有名な経済人がお客さんにいた。そのお方、私がお会いした社会人の中でも最低ランクのわがまま男。電話してくるのは秘書で、秘書は自分が言われたまんまを私に告げるのだが、「そんなもん、ダメに決まってるじゃん、アンタは何様なの?」と、言われた時点で反論してほしいような事ばかり。具体的に書くと差し障るが、一便まるごとチャーターして日本に訪れたトム・クルーズにならそういうサービスしてもおかしくない、というような事である。しかも、そんなセコい事、トムは言わないと思うけど、というようなこと。

もともと有名企業から有名私大の教授になり、その後自分の会社を起業したので、「わざわざ教授職を蹴って実業界に飛び込んだ俺様が出張するんだぞ、もっとサービスしろ!」と思ってるんだろうな。「航空会社に相談してみます」と秘書には言っておいたが、実際そんなこと航空会社に真剣に話でもしようものなら電話口で八つ裂きにされてしまう。そこで、「こんなこと言ってますので断ってください」とわざわざ前置きして、相談した実績だけを作っておいたもの。しかし、そんな気を使った私に対しても、「そういうお客さんにはビシッと断ってもらわなくては困ります」とか航空会社の担当者が言ったりするんだよなー。私はアンタとの付き合いもビシッと終わらせたいよ。

最近、歯医者の待合室で読んだ雑誌では、この男が日本経済についてアグレッシブに熱く語っていた。「大学に移ってから謙虚になった」という記事を読んだこともある。マジで?向こうが客という強い立場だから、こういう信じられないような無理難題を言うのだな、と思い、その会社が提供しているサービスに加入しようかと本気思ったこともある。そうなればこちらは客という強い立場で、ビシバシとクレームをつけてやろうじゃないの。しかしそうこうしているうちに、ある日、その会社が担当から外れることになった。こんな幸運が私に起こってもいいのだろうか。春休みのような開放感でいっぱいになった。新しい担当は隣のグループ。

しかし、担当が替わった初日に、なぜか私宛に指名電話が。やり残したことでもあるかと電話に出てみたが、別に普通に予約。その後も、誰が何と言おうと、秘書が変わろうが、電話番号が変わろうが、しつこいくらいに私宛に電話が。ビジネスではアグレッシブらしいが、こういうところで人見知りさんになってどうする。