マルモッタン美術館展で心がすさむ

パリのマルモッタン美術館展を上野で開催しているので行った。私はとっても遠近法が好き。そういう美術の鑑賞の仕方は邪道っぽいので、本当の美術ファンの前では口には出せない。

金曜日は7時までやっているので、少しゆっくり見られるだろうと思って行ったが、もうすぐ最終日なのでさすがに混んでいた。だいたい、今の時期、まず上野公園が桜を見物に来る人で混みあっているのに、ようやく奥の美術館まで行ってもまた混んでいるとは。2重のディフェンス。

マルモッタン美術館は、モネやモリゾの印象派のコレクションが充実した美術館。モネの睡蓮ばかりがかかっている「睡蓮の間」などもある。上野にも睡蓮の間があったが、ガイドツアーでごったがえしていた。私も含め、女性一人で鑑賞に来ている人が多い。一人で来ている男性は、大抵何か独り言をつぶやきながら見ていた。「ほほおぅ〜」とか、「むっ、このタッチは」とか。

帰りはせっかくだから、上野の桜を見て帰ろうと桜並木の間を歩いていたら、これが間違いだった。「お嬢さん、一緒に歩きませんか」という声が聞え振り向くと、ティ〜ティラリラリラリラ〜。はっ、頭の中で鳴り響くこれは寅さんのテーマ曲。四角い顔、トレンチコート、帽子など、どれを取っても寅さんチックなおじさんが、にこやかに笑っているではないか。ここは上野。柴又ではない。どうせなら、短めの浴衣に坊主頭の西郷さんで出てほしい。

でも、せっかく美しい絵を見て、桜を堪能してよい気分で歩いているのに、一気に現実に引き戻された。気が付けば両脇は、青いビニールシートで陣取りしたサラリーマン達。「よっ、部長待ってましたっ!」との声も聞こえる。一本締めとか。まだ7時前なのに締めてどうする。

結局ブルーな気分で家路につき、買ったパンフレットを眺めることに。これが印象派展でよかった。ピカソの「ゲルニカ」とか、ムンク「叫び」とか見た後じゃ、もっとブルーになっていたはず。