税務署で負け犬感を満喫する

私は国家権力となぜか相性が悪い。戦時中だったら、何か運の悪いヘマをやっただけで投獄されているかもしれない。そんな私でも、何年かに一度、確定申告の時期、税務署にお世話にならなくてはならない。今年もその時期がやってきた。

いつもは書類を熟読すると、何となく全貌が見えてきて、あとは力ずくで計算して作成し郵送して事を済ませていた。しかし、今年は申告しなければならないものが複数あり、早速それ用の書類を読んでみると、キーッ!何度読んでも意味がわからないし、全貌もつかめない。

昔、高校の進路指導の先生に、「君は小さい頃から、勉強がよくできると言われていただろうが、ものすごく良くできるとは言われなかったはずだ」と断言された事を思い出す。実は「よくできる」なんて言われた事はなかったので、誉められたような気がしたが、よく考えたら「お前の能力は所詮ここまで」と断定されたようなもの。この言葉、人生の壁に突き当たるたびに思い出してヘコんだものです。

そんなわけで、試行錯誤の結果どうにもならなくなり、結局国家権力の中枢部国税局へ負け犬気分ですごすごと相談しに行った。税務署員にこっぴどく叱られそうな気がする。「こんな計算ができないのなら、申告なんてやめちまえ!」とか。私の今の収入じゃ、申告は納付のためというより還付のためのもの。税務署的には、やっぱり納付者に対して力をいれたいところだろうし。

ところがここで相談に乗ってくれたのは、感じがよく親切な若い女性の税務署員。私が電卓を投げつけた複雑な箇所でも、涼しい顔でさらりと計算してくれた。私の国家権力に対する不信感は、結構軽減されたと思う。旅行会社のカウンターに出したら、トップセールスを記録できると思うが、本人は断るだろう。

しかし、それでも私の負け犬感はさらに高まるばかり。たぶん、ものすごく良くできる人の実物ってあんな感じなのだろう。