通称「牛乳屋さん」という、謎の職業

以前働いていた会社では、毎週月・水・金に「牛乳やさん」がやってきていた。ヤクルトみたいに、台車に飲み物やお菓子を満載して企業のオフィスをまわってくれるので、売店がないビルや、買食いがはばかられるオフィス環境の社員には人気があった。

牛乳自体の売り上げは少なく、持参するアイテムの中にも牛乳はあまりないし、本当は「田口三郎商店」とか、そんな名前があるのかもしれないが、どんなお局社員に聞いても「牛乳屋さんは牛乳屋さんよ。」というので、もういい、「牛乳屋さん」でいいわよ。

牛乳屋さんは、毎回午前中にやってきて、エレベーターホールに台車を広げ、持参の鐘をちりんちりんと鳴らして来訪を告げる。お局社員は、「紙芝居屋さんみたいねえ。」と同意を求めるが、ほんと、私にはわかりませんって。たまに、上の階で鳴っている鐘の音に反応して思わずフライングしてしまうこともあった。

箱売りのお菓子もバラで売ってくれるので、ロッテのチョコパイなど、一箱買うのはキツイというようなお菓子を良く購入させてもらった。一個45円だったのだが、それが割高なのか割安なのか未だにわからない。しかし、チョコパイって職場で食べるにはふさわしくないお菓子。他にも、わさびおかきやサキイカなど、どう考えてもお酒のおつまみみたいなお菓子も数多く売られていた。でも昼間の職場で、サキイカを食べながら書類を作成している女子社員って、ちょっと素敵。

年末などにお歳暮や、お客さんからもらったお菓子で女子社員の机の引き出しが充実してくると、とたんに利用率が下がってしまうらしく、誰か買いにくるまで鐘を鳴らし続けるので何か申し訳ない気分。そんな時、トイレに行こうとしてついうっかりエレベーターホールを通ってしまうと、牛乳屋さんの期待に満ちた視線を感じてしまうので、非常に行きづらかった。