水泳には向かない女

小学一年生の頃、クラスで泳げない最後の二人のうち一人だった。しかも、もう一人はあと一歩で泳げる位成長したのに、私ときたら水に顔をつけることすらできず、プールのへりに必死でつかまっていた。それを先生は必死にはがして、また私が必死につかまることの繰り返し。結構高学年までシャンプーハットを使っていたし、前世ではきっと溺死していたに違いない。

しかし、それがいつの間にか体育の授業の中でも水泳が得意になり始め、中学の時に水泳部に入部した。とは言うものの、水泳の英才教育を受けた生徒にはかなわず、いつも中くらいの成績。あの時、自分で努力してもどうにもならないことがあると知ったのかも。優勝するような選手は、肩幅も肺活量も段違い。私がいくら筋トレしても、絶対に肩に筋肉はついてくれなかった。今でもオリンピックでは、選手のスイムスーツや顔などよりも、肩の筋肉に目が釘付け。

それに、朝、顔を洗っている時に、ちょっと息を止めただけで「お、おぼれる〜」といつも思う。肺活量もイマイチらしい。病院の手術前の検査で、肺活量の測定というのがあったが、それにも何度も失敗した。隣で子供が一生懸命「ふ〜っ」と吐いていて、看護士さんに「ホラ、5歳の○○ちゃんもあんなに頑張っているんだから」なんて励ましを受けた。「スポーツはしていたの?」という看護士さんの質問には、まさか水泳をやっていたとは言えず、「キャ、キャンプを少々・・・」と、それはスポーツなのか?という答えをしてみたり。しかもキャンプに行くのは一年に一度なのに。

そんな私だが、しかし、スポーツクラブでは一度も休まずに一時間泳ぐことができる。これは特技と言ってもいいかもしれないが、あまり役立たない。たまに、同じレーンで、「マスターズ」の帽子をかぶってバタフライを泳ぐ迷惑なシニアと一緒になってしまうことがある。このシニア、超全力を振り絞って50メートルを泳ぎきるのだが、その後なんかのんびりとレーンの端で休んでいる。そして私がその間に何往復かして、シニアが休んでいる地点まで来てターンしようとすると、シニアのヤツ、ターンしようとする私の目の前で、いきなりまた全力でバタフライを泳ぎ始める。ヤロ〜。

大人気ないと思いながらも、その後全力で泳ぐシニアにぴったりついて泳ぎ、体力の限界寸前。私が前世で溺れたのは、こういう無意味なチキンレースの結果だったのでは。