パソコンおやじ

私が勤務している会社に、私の中だけで「パソコンおやじ」と呼んでいる、おじさんがいる。このおじさんは入社以来営業畑一筋を歩いてきた人なのだが、昨年定年を迎え、現在は嘱託としてシステム関係の管理をしている。今もなお社内ネットワーク構築・メンテナンスに関して、かなりの活躍ぶりをみせているのである。決してパソコンになじみのある年代ではないはずであり、むしろまったく触ることすらできない人達の多い世代だと思うのだが、とりあえず、社内システムや市販のパソコンについての知識は社内一である。60を過ぎてもなお、最新のコンピューター知識と探究心を持っていることは驚きである。
このおじさん、身長はそこそこあり、太ってもいず、髪も禿げているどころか、ロマンスグレーで、見た目典型的なおじさんではなく、知らない人が見ればなかなかのスマートおやじである。
ところが、ある日の昼休みのことである。営業マン達は皆出払っており、昼休み中ということもあり、得意先からの電話もなく、社内は「シーン」とした雰囲気だった。その静まりかえった中、突如「さぶちゃん」こと、北島三郎のド演歌が大音量で聞えてきたのである。音のしてくる方を見ると、旧型のラジカセの前で、パソコンおやじが嬉しそうな顔をしているではないか。周囲からは「うるさーい」とか「何で演歌なの?せめてジャズとかにしてっ!」という女性社員達からのブーイングの嵐。パソコンおやじは「うるせえっ!」と一言返したものの、皆からヒンシュクをかっていた。やっぱりあの年代はなんだかんだ言っても「演歌」なのだろうか。
パソコンおやじが、実は昔ヤンキーだったということは、社内では割と知られている。大学生の頃から車はスカイラインと決めているようで、かつては典型的なヤンキー仕様であるシャコタンの「ハコスカ」でブイブイいわせていたらしい。なんと60を過ぎた今でもハコスカに乗っているらしいのは驚きである。
パソコンおやじに関する噂は他にもいろいろある。いい歳をして少年漫画雑誌が好きで、今でも連載ものを熱心に読んでいるらしい。昼休みに会社の近所のコンビニで菓子パンを食いながら漫画を立ち読みしている姿を何度も目撃されているという。いったいどういうおじさんなのだろうか?機会があったら、また新ネタをご提供しよう。