芋焼酎をけちる男

ここ数年、本格焼酎の人気は定着した感がある。
テレビや雑誌などでも、様々な地焼酎が紹介され、酒飲みとしては嬉しい限りだ。一頃は「おやじ」の飲み物というイメージが強かったが、近頃では老若男女問わず飲まれているようだ。
焼酎は原料により味が異なるので、色々な味が楽しめる。その中でも特に芋がいい。ほのかに香る甘い芋の香りはたまらない。
昨夜も楽しみにしていた芋焼酎をいそいそと出してきて、お湯割の仕度をしていると、横から鋭い視線を感じたのである。
それは「みかん様」の視線であった。買い置きしていた芋焼酎がそろそろ無くなりそうな状況で、飲み始めた酒が満足する前に無くなるという、酒飲みにとっては最もつらい事態を避けるため、あえて「みかん様」の視線を無視したのであった。
残り少ないからと言って分けるのを惜しむのは、とてもせこく、けちな奴という気もするが、それ以上に「ドイツから直輸入のホットワイン」や「ロシアで買い付けたマトリョーシカウォッカ」等、楽しい酒の在庫をたくさん持っていながら、芋の件を根に持つせこい「みかん様」は恐るべし。