重役クラスのIT革命

私の父は、今は引退したが上場企業の副社長にまでなった人であり、私が大変に尊敬している人物だ。しかし、中途半端に好奇心が強いためモバイルやPDAなどに手を出し、恐らく会社のシステム担当の人間に、相当疎ましがられていた存在である。

シグマリオンが発売された当時、「禁断の他キャリア接続」という裏技で、会社のJフォン携帯につなごうとして四苦八苦し、同行者Sが毎日毎晩電話で質問攻めにあっていた。

何日かたってようやく接続できたらしく、初めてのメール(空メールだった・・・)が届いた時に、同行者Sは、免税品の機内販売の計算を克服した堀ちえみを見守る教官のように、目頭が熱くなったという。

いまそのシグマリオンは、彼の妻が時々ソリティアをやるだけの機械になったようである。

一度、彼の会社にIT化の波が押し寄せた時、自分のパソコンが新しくなったと言ってご満悦であった。何に使っていたのか知らないが。「会社のパソコンは、液晶ディスプレイを縦にすると、表示画面も縦書きになる」とかいう、パソコンの本質とは離れた自慢をしていた。他に、必要でなおかつ有効に役立てる部署がいくらでもあったと思う。